
本気で湯豆腐を楽しみたいのであれば、具はなるべく少ないほうがいい。豆腐は80%が水でできているため、他の食材の味の影響を受けやすく豆腐本来の味が損なわれてしまうからである。
まず、湯豆腐桶に国産のミネラルウォーターを入れる。間違っても水道水などを使ってはいけない。何度も言うが豆腐の80%は水である。美味しい豆腐であるほど、よい水で作られている。折角の美味しい豆腐を水道水でまずくしてはいけない。また、ミネラルウォーターは、軟水である国産品を使って欲しい。
次によく湯豆腐桶に、絞ったふきんで拭いた昆布を敷き、銅壺に、しっかり火のついた炭を入れる。食卓で炭を使うので、途中で炭を落としたりしないように
注意が必要。

豆腐の料理本には、冷たい水の状態で豆腐を入れるように書かれているかもしれない。しかしそれは安いな豆腐を使った場合だ。安い豆腐は凝固剤に硫酸カルシウムやグルコノデルタラクトンを使用している。硫酸カルシウムなどは豆乳をゆっくり固める性質があり、多少分量を多く入れても豆腐作りで失敗することが少ないため、多めに入っていることが多い。硫酸カルシウムは石膏の原料となるものでもちろんそのままで美味しいものではない。それが大量に入っていると・・・想像したくない。

から、水の状態から豆腐を入れ、余分な硫酸カルシウムを水に溶かしだしてしまったほうが湯豆腐は美味しくなる。

かし、凝固剤に塩化マグネシウム(天然にがり)だけを使った豆腐の場合、分量を少しでも間違えると立派な豆腐にはならない。つまり、天然にがりで丁寧に作られた豆腐には、余分なにがりは多く含まれていないということだ。また、塩化マグネシウムはそのままなめるととても苦くてまずいものだが、豆乳のタンパク質と合わせられるとその苦味がうまみに変わる。
さらに、水にさらして余分な苦味を取り除いているので、あまり長い間水やお湯につけていると、豆腐本来の旨みが逃げてしまうのだ。だから私は、本当に美味しい豆腐で湯豆腐を作る場合は、ある程度水の温度上がってから豆腐を入れる。同じ理由で、豆腐を小さく切り過ぎると豆腐の味が抜けてしまうので、大きめに切り分けてから入れる。

の湯豆腐桶では、ガスや電気を使わず、炭を使って水を温める。急激に温度を上げることができないのですぐに食べることはできないが、うまい湯豆腐を食べるのに急ぐ必要はない。湯豆腐桶の水が温まると湯気が漂い始める。お湯から湯気が立ち始めた頃を見計らっておもむろに豆腐を入れる。湯豆腐桶に使われている椹(さわら)のよい木の香りがただよい、食欲をそそる。何度も言うが、湯豆腐は長時間お湯に浸けておいてはいけない。豆腐がゆらゆらと動いてきたら食べごろだ。そっと豆腐すくいを豆腐の尻に挿しこみ、豆腐を持ち上げる。

違っても水を沸騰させてはいけない。折角の豆腐の味が台無しになってしまう。この湯豆腐桶は炭でお湯を暖めるので、温めすぎて沸騰させてしまうこともない。
適度な温度で湯豆腐を暖めておいてくれる。そして豆腐をだしにつけて頂く。熱くて口に入れられないようならそれは暖めすぎである。熱すぎると味もわからない。温度はあくまで味わえる程度の熱さである。
そして、口いっぱいに広がる豆腐本来の旨みを身体全体で味わって欲しい。